田中さん(38歳・会社員)が自身の体の異変に気づいたのは、ある日の朝礼でのことだった。同僚が撮影した写真に写る自分の姿は、想像以上に丸々としており、頭頂部はライトの光を反射して光っているように見えた。ショックだった。体重は入社時から十五キロも増え、健康診断では毎回のようにメタボリックシンドローム予備軍と指摘されていた。薄毛も見て見ぬふりをしてきたが、もう限界だと感じた。彼はその日から、自身の肉体改造計画を開始した。まず取り組んだのは、食生活の徹底的な見直しだ。毎日のように通っていたラーメン屋を封印し、愛してやまなかった缶コーヒーを水かお茶に変えた。妻の協力のもと、夕食は野菜スープと鶏むね肉、玄米といったヘルシーなメニューに。昼食はコンビニのサラダチキンとゆで卵が定番になった。同時に、通勤方法も変えた。一駅手前で電車を降り、毎日往復で四十分歩くことを自らに課した。最初の二週間は、空腹感と筋肉痛との戦いだった。しかし、三週間目に体重計が三キロ減を示した時、彼の心に火がついた。半年後、彼の体重は十キロの減量に成功し、スーツのサイズはワンサイズダウン。体は明らかに軽くなり、長年悩まされていた肩こりも解消されていた。そして、それ以上に彼を喜ばせたのが髪の変化だった。美容院で担当の美容師から「田中さん、最近何か始めましたか?髪にすごくコシが出て、量も増えた感じがしますよ」と言われたのだ。自分でも感じていた手応えが、他人の目にも明らかになった瞬間だった。地肌が目立っていたつむじ周りは、明らかに密度を増し、一本一本の髪が力強く立ち上がっている。肥満という健康問題に向き合った結果、長年のコンプレックスだった薄毛まで改善された。田中さんは今、自信に満ちた表情で、新しい人生を歩み始めている。