本日は、長年肥満治療と薄毛治療の両方に携わってこられた、生活習慣病の専門医である山田先生(仮名)にお話を伺います。先生、多くの人が悩む肥満と薄毛ですが、医学的にはどのような関係があるのでしょうか。「肥満と薄毛は、生活習慣の乱れという共通の根から生じた、二つの異なる枝葉と考えるのが最も分かりやすいでしょう。特に問題となるのが、内臓脂肪の蓄積です。内臓脂肪は単なるエネルギーの貯蔵庫ではなく、様々な生理活性物質を分泌する、いわば内分泌器官として働きます。そして、肥満状態ではこのバランスが崩れ、慢性的な炎症状態を引き起こすのです。この微弱な炎症が全身の血管を傷つけ、動脈硬化を促進し、当然ながら頭皮への血流も悪化させます。これが薄毛の一因です」。なるほど、血流の問題は大きいわけですね。ホルモンの影響はいかがでしょうか。「非常に大きいですね。肥満、特にインスリン抵抗性を伴う肥満は、AGA、つまり男性型脱毛症を悪化させる可能性があります。インスリン抵抗性とは、血糖値を下げるインスリンの効きが悪くなる状態で、これを補うために体は過剰にインスリンを分泌します。この高インスリン血症が、男性ホルモンの働きを増強させたり、IGF-1といった髪の成長に重要な因子の働きを阻害したりすることが分かってきています。つまり、肥満を放置することは、薄毛のアクセルを踏み続けるようなものなのです」。では、悩んでいる人はまず何をすべきでしょうか。「まずはご自身の状態を客観的に把握することです。健康診断の結果を見直し、BMIや腹囲、血糖値などを確認してください。そして、肥満も薄毛も、放置すれば進行する病気であるという認識を持つことが重要です。自己流のダイエットや育毛ケアで改善が見られない場合は、躊躇せずに専門の医療機関に相談してください。食事指導や運動療法、そして必要であればAGA治療薬など、医学的根拠に基づいた適切なアプローチで、危険な連鎖を断ち切ることが可能です」。