薄毛お悩み解消ネット

2019年10月
  • 検査結果は治療法選択にどう影響?

    抜け毛

    AGA遺伝子検査の結果は、自分が将来薄毛になるリスクを知るだけでなく、もし治療が必要になった場合に、「どのような治療法がより効果的なのか」を選択する上で、何らかの参考になるのでしょうか。現状と今後の可能性について考えてみましょう。現在のAGA治療の中心は、内服薬(フィナステリド、デュタステリド)と外用薬(ミノキシジル)です。これらの薬剤の効果には個人差がありますが、その差の一部に遺伝的な要因が関与している可能性が研究されています。例えば、「フィナステリド」の効果についてです。フィナステリドは主にⅡ型の5αリダクターゼを阻害しますが、この酵素の活性に関わる遺伝子のタイプによって、フィナステリドの効果の出やすさが異なるのではないか、という研究報告があります。同様に、「アンドロゲン受容体遺伝子」の感受性の高さ(リピート数)も、フィナステリドやデュタステリドの効果の程度に関連する可能性が示唆されています。感受性が高い(リスクが高い)タイプの人の方が、DHTを抑制する薬剤の効果をより実感しやすいのではないか、と考えられるわけです。また、「ミノキシジル」の効果に関しても、頭皮でミノキシジルを活性型に変換する酵素(硫酸転移酵素)の活性に個人差があり、これが効果の違いに関係しているのではないか、という研究が進んでいます。将来的には、遺伝子検査によって、これらの薬剤に対する個々の反応性を予測し、より効果が期待できる薬剤を選択したり、あるいは効果が出にくい可能性のある薬剤を避けたりといった、「個別化治療(オーダーメイド治療)」が可能になるかもしれません。しかし、現時点では、これらの関連性はまだ研究段階であり、遺伝子検査の結果だけを見て「あなたにはこの薬が効きます/効きません」と断定できるほど、明確なエビデンスが確立されているわけではありません。AGA治療法の選択は、あくまで医師が、患者さんの症状の進行度、年齢、健康状態、希望などを総合的に判断して決定するのが基本です。遺伝子検査の結果は、医師が治療方針を考える上での「参考情報の一つ」にはなり得ますが、それが決定的な要因となる段階にはまだ至っていません。検査結果を持参して医師に相談することは有益ですが、過度な期待はせず、医師との対話を重視することが大切です。

  • 植毛技術の進歩とこれからの展望

    抜け毛

    植毛手術の技術は、過去数十年の間に目覚ましい進歩を遂げてきました。初期の植毛は、採取する毛髪の単位が大きく、仕上がりが不自然に見えることもありましたが、現代の植毛技術は、より自然で、より患者さんの負担が少ない方向へと進化し続けています。その進化の歴史と今後の展望について、少し技術的な側面から解説します。大きな転換点となったのは、毛包単位(フォリキュラーユニット)という概念の確立です。これは、1本から数本の毛髪が自然なグループを形成している単位で、これをそのまま移植することで、より自然な密度と毛流れを再現できるようになりました。この毛包単位での移植を可能にしたのが、FUT法(ストリップ法)であり、その後、さらに低侵襲なFUE法(ダイレクト法)が登場しました。FUE法では、当初は1mm程度のパンチが使用されていましたが、技術の進歩により、現在では0.6mmから0.8mmといった極細のパンチが用いられるようになり、採取痕がより目立たなく、回復も早くなっています。また、採取した毛包(グラフト)の品質を維持するための保存液の開発や、移植時の毛包へのダメージを最小限に抑えるためのインプランターと呼ばれる器具の改良も進んでいます。これにより、移植毛の生着率が向上し、より少ないドナー毛で効果的な結果を得ることが期待できるようになりました。近年では、ロボット技術を植毛手術に応用する試みも行われています。植毛ロボットは、画像解析技術を用いてドナー毛を正確に識別し、安定した品質で毛包を採取することが可能です。これにより、術者の疲労による精度の低下を防ぎ、大量のグラフト採取を効率的に行うことが期待されています。しかし、現状ではまだ人間の医師の判断や技術が不可欠な部分も多く、ロボットと医師の協調が重要とされています。今後の展望としては、再生医療技術の応用が期待されています。例えば、自身の少数の毛包細胞を培養し、増殖させてから移植する「毛髪再生」の研究が進められています。これが実現すれば、ドナー毛が少ない人でも植毛が可能になるかもしれません。また、iPS細胞などを用いた毛包そのものの再生技術も研究されており、将来的には薄毛治療の選択肢を大きく広げる可能性があります。植毛技術は、より自然に、より安全に、そしてより多くの人が恩恵を受けられるよう、これからも進化を続けていくことでしょう。